
養育費の取り決めを「公正証書」にしておくと、未払いが起きたとき裁判なしで給与の差押えに進めます。保証会社の申込みにも使える、養育費を守るいちばんの基本書類です。費用・必要書類・作成の流れ・盛り込むべき内容を、初めての方向けに解説します。
公正証書とは何か、なぜ強いのか
公正証書は、公証人(法務大臣に任命された法律の専門家)が公証役場で作成する公文書です。夫婦間で作った離婚協議書と違い、「強制執行認諾文言」を入れた公正証書は債務名義になります。つまり、支払いが止まったとき、裁判を起こして勝訴判決を得るステップを飛ばして、直ちに相手の給与や預金の差押えを申し立てられるのです。
2026年4月の改正民法で、金額と支払期日を明記した合意書があれば公正証書なしでも差押えできる「先取特権」が新設されましたが、先取特権で優先的に差し押さえられるのは子1人あたり月8万円までという上限があります。取り決めた養育費がこれを超える場合や、慰謝料・財産分与もまとめて担保したい場合には、いまでも公正証書が最も確実な備えです。また、養育費保証会社の多くは公正証書(または調停調書)を申込み条件にしているため、保証会社の利用を考えている方にも必須の書類です。
いくらかかるか——手数料は「5年分の総額」で決まる
公証人手数料は、養育費の場合「支払総額(ただし5年分まで)」を目的価額として計算されます。月額別の目安は次のとおりです。
| 月額養育費 | 5年分の総額 | 公証人手数料の目安 |
|---|---|---|
| 月2万円 | 120万円 | 7,000円 |
| 月4万円 | 240万円 | 1万1,000円 |
| 月6万円 | 360万円 | 1万1,000円 |
| 月10万円 | 600万円 | 1万7,000円 |
このほか、証書の枚数に応じた用紙代(正本・謄本で数千円程度)がかかります。慰謝料や財産分与も同じ証書に盛り込む場合は、その分の目的価額が加算されます。総額でも2〜5万円程度に収まるケースが大半で、将来数百万円の養育費を守る保険料としては十分に割安です。なお、自治体によっては公正証書の作成費用を補助する制度もあります(養育費保証料の補助と同じ枠組みで実施している自治体が多く、補助金一覧で確認できます)。
必要書類と決めておくべき内容
公証役場に行く前に、次の書類を揃えます。
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカードなど(夫婦それぞれ) |
|---|---|
| 戸籍謄本 | 夫婦と子どもの関係が分かるもの |
| 取り決め内容のメモ | 離婚協議書の案。決まっていない部分があっても相談可 |
| (あれば)財産関係の資料 | 不動産の登記事項証明書、年金分割用の情報通知書など |
養育費について盛り込むべき核心は、「誰が・誰に・子ども1人あたり月いくらを・毎月何日までに・いつまで支払うか」です。金額と支払期日が特定されていない曖昧な書き方では、差押えにも先取特権にも使えません。加えて、進学時の特別費用(入学金など)の分担、再婚した場合の扱い、賞与月の加算などを決めておくと、後の紛争を減らせます。金額の相場は裁判所の養育費算定表が基準になり、双方の年収と子どもの人数・年齢から目安が決まります。

作成の流れ——最短2回の来訪で完成
作成はおおむね次の流れで進みます。①夫婦で内容を合意し、メモや協議書案にまとめる。②最寄りの公証役場に連絡して予約を取り、案と必要書類を送る(メール対応の役場が増えています)。③公証人が証書の案文を作成し、内容を確認・修正する。④指定日に夫婦で公証役場へ出向き、公証人の面前で署名押印して完成——という手順です。どうしても相手と同席したくない場合や相手が遠方の場合は、代理人による作成が認められることもあるため、事前に公証役場へ相談してください。
完成までの期間は、内容が固まっていれば2〜3週間程度が目安です。公証役場は全国に約300か所あり、どの役場でも作成できます(日本公証人連合会のサイトで検索できます)。
公正証書ができたら——「その先」の備え
公正証書は、未払いが起きたときに戦える武器ですが、未払いそのものを防ぐわけではありません。作成後の備えとして、①未払いが起きたら直ちに強制執行に動く、②保証会社と契約して立替の保険をかける、の2つの路線があります。公正証書があれば保証会社の審査にも申し込めるため、「差押えの武器+立替の保険」の両方を持つことも可能です。どちらが合うかはかんたん診断で整理できます。
相手が取り決めの話し合いに応じない場合は、公正証書ではなく家庭裁判所の養育費請求調停(申立費用は子1人あたり収入印紙1,200円+郵便切手)へ進みます。調停で決まった内容は調停調書となり、公正証書と同じく債務名義になります。話し合いの段階から専門家の力を借りたい場合は、弁護士の無料相談も活用してください。
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